小さきもの達の抵抗

小学生男子に計画などない。思い立ったが吉日なのである。

自作の弓矢、剣を手に取り、戦いへ向かう。

少し高いところに仲間たちと陣取り、今日も屋根付きベンチにたかる高校生を見下ろす。

小学生の自作とはいえ、その弓矢は当たれば血が出ることが仲間内で判明している。怪我をさせればおおごとになることくらいは当時の我々でもわかる。よって、最初の攻撃は弱くて威力の出ない矢で屋根に威嚇射撃であった。

仲間と共に一斉に矢を放ち、帰れ、もう来るなと喚きたてる。次々と矢を放つ。続けて叫ぶ。

その日の高校生たちは、それだけで慌てて帰ってしまった。

あまりに呆気無かったが、我々は自分達の領土を守った。

それで満足だった。次にまた彼らが現れても大丈夫だと感じ、邪魔者のない自由を確信した。

大きなものたちの逆襲と最後の戦い

翌日の我々は平和を確信し、今まで通りの日常を過ごしていた。

しかし、俄かに周りがざわつきだす。また彼ら、高校生の声がする。でもいつもより賑やかだ。

現れたのは、ガタイの良い男子高校生十数名だった。

対する我々は5人程度、秘密基地作りにやってくる全メンバーは15人程度いたが、習い事などで全員が揃うことは、まずない。

5人はいつもどおりの人数といったところ。

それぞれ武器を取り、応戦しようとするも、一気に走り向かってくる彼らに威嚇射撃の暇もない。退却しかなかった。

公園内は木々も多いし、竹林もあり、高低差も激しい。いくら体格で勝ろうとそこを毎日走る我々にとって逃げることは難しくない。

走りやすい道、踏んではならない場所、通り抜けられる枝葉の隙間。公園は我々の味方だった。

一旦彼らから逃げ、追跡がやんだところで自分含め4人が合流。ヒットアンドアウェイの威嚇射撃の作戦に出ようと彼らが集まっている屋根付きベンチに向かう。

ところがベンチの方から泣き声が聞こえた。

一人我々の仲間が高校生に捕まっていた。

そいつはメンバーの中でもちょっと感情的になりやすいタイプ。あとから知ったことだが高校生がやってきて全員が撤退する中、一人で突っ込んでいったようだった。

ついでにそいつは泣いてはいるが、興奮しすぎて泣いているのであり、高校生に泣かされた感じではないことは、その状況を見た我々にはわかった。まあ、我々仲間からすれば、そいつの泣くのは、よくあることである。

そいつを確保した高校生はそいつを人質に、残った我々に対して降伏を要求した。

少し高いところに陣取っていた我々は、大人しく降伏した。

無血、戦いの終わり

武器を没収され、全員が一列に並べられた。高校生達は学校の先生みたいな口調で我々に注意をした。

何故か高校生側のいじられ役が上裸で我々と一緒に並ばされ、我々以上に大きな声で返事をしていた。おかげでその場は険悪な雰囲気が流れることはなく、全ては笑い話で過ぎていった。

そんな感じで双方怪我人を出さず、戦いは終わった。お互いに根が優しいだなといったところだった。

ただし、いじられ役の尻を叩くときに私の剣を使ったことは許さない。木製の薄い板の剣の側面で叩いてヒビをいれてくれたのだ。なかなかにショックだった。

その後、彼らは屋根付きベンチ、我々はそれ以外の場所でお互いの領域を干渉せず過ごすようになった。

我々は一応のところ平和と自由を抗争の末に取り戻したのだった。

これが昔私が高校生に言葉の通り、弓を引いたお話。くだらない思い出話にお付き合いくださり、ありがとうございました!