2020年は間違いなくホラーの年!!

韓国、ポン・ジュノ監督のサスペンスホラーコメディ『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞4部門受賞という偉業を成し遂げました!!
と思いきや、 日本では『呪怨』シリーズの清水崇監督が『犬鳴村』で久々の超一級Jホラー(個人感想)をお見舞いしてくれました。

海外に目を向ければ、名作の続編・リブートラッシュです。
音を立てたら即死の異色パニックホラー続編『クワイエットプレイス2』
ホラー界のアベンジャーズこと死霊館シリーズ8作目『死霊館3』
現代に蘇った名作古典の続編『ハロウィンキルズ』
『呪怨』のハリウッド作品としては実は4作目の『ザ・グラッジ』
永遠に続く後継者争いの傍迷惑スプラッター『ソウ』のスピンオフ作品も控えています

そんな中、147分の地獄を引っ提げてあの監督が帰ってきました・・・!!

リ・アスター!!


2018年、長編映画デビュー作となった『ヘレディタリー/継承』は各方面から絶賛の嵐。 「現代ホラーの頂点」「21世紀最高のホラー映画」とまで言われた超傑作です。

先の見えない不安からくる息苦しい恐怖
美しさすら感じる不気味な画面構成
耳にじめりと絡みつく「あの音」
クライマックスの怒涛の展開
そして主役を演じるトニ・コレットの恐怖に歪む顔のドアップ!!

古典ホラー的題材を身の毛もよだつ技巧的表現で見事にトラウマ作品に昇華した傑作ホラーです。

『ミスト』とはまた違った意味で二度と見たくないですね!!!

とまあ華々しく長編映画デビューを飾ったアリ・アスター監督が
今度はこれまた美しい映画を撮ってくれましたよ!!

というわけで、今回は最新映画『ミッドサマー』を紹介します。ネタバレ無しです。
なんとなくですが、7年程前に行った、瀬戸内国際芸術祭の写真が映画の画面的なイメージに近かったので、一緒にお楽しみください。

『ミッドサマー』あらすじ

家族を不慮の事故で失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人と共にスウェーデンの奥地で開かれる”90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖……それは想像を絶する悪夢の始まりだった。

『ミッドサマー』公式サイトより引用

『ヘレディタリー/継承』では暗~い画面で恐怖を体感させられましたが、今作では一転、白夜のお祭りが舞台です。

息を飲むほどに白く美しい映像!!
何と言うかもう「ホッ」という呼吸音すらもう恐いです。

感想

白夜のお祭りには絶対に行かないと決めました・・・。

『バケーション』を観てからサメが恐くて海に行ってないですし、スキー場のリフトに上空で取り残される『フローズン』を観てからスキーにも行ってません。リフトなら大丈夫かと思いきや『フローズン・ブレイク』を観てしまったので雪山のリフトにも乗れなくなりました。
白夜は一回くらい体験してみたいなーと思っていましたが、もういいです・・・。
これ以上僕から行動範囲を奪わないでください・・・。

画像 はイメージです

白夜の地獄

まさにこれ。2時間強たっぷりゆっくりと地獄を体験させていただきました。
アリ・アスター監督。ありがとうございます。
いやー、えげつなかった!!

勿論怖かったのですが、それ以上にえげつなかった。
『ヘレディタリー』の時のような一切遠慮無しのサービス満点ののゴア描写は健在。
「近親相姦」だとか「血縁」だとか「性交」といった精神的嫌悪感を感じさせる要素も見事に映画内に配置。
心身共に超一級のえげつなさをお見舞いしてくれました。

画像はイメージです

美しすぎる映像

舞台となるのはスウェーデンの山奥。
白夜に照らされ、木々や芝生が淡い緑で画面を覆います。
この淡い緑これが見事なキャンバスとなり、画面に映るものの色を引き立ててくれます。
村の人々の真っ白な衣装。色取り取りの鮮やかな花々。美しく照らされる肌の色。黄色の神殿。真っ赤な

三角形の黄色の神殿は、明らかなカルト的異質さを醸し出しつつも、なんだか不思議としっかり美しいんですよね。
大自然の中にボンとある奇妙さが美しいというか。
直島にある草間彌生の作品を思い出しました。

画像はイメージです

アリ・アスター流、失恋との向き合い方

アリ・アスター監督は、本作を作るにあたって自身の失恋の体験から着想を得ているそう。
とんでもねー人だな!!
失恋のショックからこんな映画を作ってしまうとは。見習わなきゃですね。

主人公の女性、ダニーに自分を投影しているそうです。監督の恋愛の経緯については知りませんが、映画を観れば恋人だった誰かに対する監督の思いがよく分かります。そりゃそうだよな!!

本作は心身ともにえげつない映画ではありますが、同時に愛、救い、再生のようなポジティブな要素も孕んだ作品だと思います。

観終わった後、不思議な気分でした。
美しいものを観たのに、息が苦しい。
恐いものを観たのに、どこかすっとする。

劇場を出た後に春ののどかな陽気にあてられてぶっ倒れそうになる、そういう不思議な映画でした。

画像はイメージです

これから観る人へ

映像の美しさに酔ってください

映像の美しさに酔ってください

えげつない描写に恐れおののいてください

人の視線、背景美術、衣装の変化・・・
散りばめられた暗喩に目をやって、にやりとほくそ笑んでください

最後にこれだけ

大切な人と一緒に見に行くことだけはやめといてください


いやー、すごい作品でした。脳と心が疲れました。
アリアスター監督の作品は3年に一回観るくらいがいいですね。
次は気楽に観れる映画を観ます。『バトルシップ』でも観て頭をカラッポにしよう。