あらすじ

畳を擦る音が聞こえる、
いるはずのない赤ん坊の泣き声がする、
何かが床下を這い廻る気配が……。
だから、この家には人が居着かない。
何の変哲もないマンションで起きる怪異を調べるうち、
ある因縁が浮かび上がる。
迫りくる恐怖は、どこまでが真実なのか。
──衝撃のドキュメンタリー・ホラー!

出典:新潮社小野不由美「残穢」特設サイト

小説家である「私」のもとに、女子大生の久保さんという読者から、1通の手紙が届きます。
「今住んでいる部屋で、奇妙な音がするんです」
畳を擦る謎の音の調査を開始する2人。
その根を手繰る中、過去の住人達に纏わる恐ろしい話に出会う

という内容。

監督は『チーム・バチスタの栄光』
『殿、利息でござる!』
『決算!忠臣蔵』等で有名な中村義洋
(個人的には『白ゆき姫殺人事件』がベスト)

実はかの有名な『ほんとにあった!呪いのでビデオ』の初代監督だったり『仄暗い水の底から』の脚本を手掛けたり・・・と、
実はホラーにかかわりの深い方でもあります。

ちなみに『残穢』の脚本は
『仄暗い~』で中村義洋と共に脚本を手掛けた鈴木謙一
手堅いタッグです。

■みどころ

●過去を辿る、土着歴史ホラー

本作は、ホラー小説化の「私」と女子大生の久保さんの2人が
「謎の音」の正体を探るべく、部屋にまつわる「穢れ」を調査していくという作りになっています。
『リング』に代表されるような、ホラーの王道ストーリーの1つです。

本作のキモは、その謎の鍵が土地にあるということ。
『リング』では呪いの鍵は「貞子」という人物にあり、
主人公たちは「貞子」の形跡を追ってあちこち奔走します。
一方『残穢』では、「マンションの部屋」の謎・・・そして
「その土地自体」の謎を追い、土地の歴史を追うことになります。

それだけでは単なる歴史発掘バラエティになってしまいますが、
そこに「過去にその土地に住んだ人物の顛末」のストーリーが
挿入され、飽きさせることのない作品に仕上がっています。

●素朴で身近なコワさ

話が進んでいくと、怪異の正体はシャレにならない規模だということが判明していきます。
様々な話が、手繰っていくと根が同じだと次々と判明する展開は
恐怖と興奮が交じり合う、とても良いゾクゾクを味わえます。

しかし、登場人物の身に実際に起こるのは
「畳をする音が聞こえる」とか「変な電話がかかってくる」とか
「なんか首が重い」とか「床下から声が聞こえるような気がする」とか結構地味なものばかり。

これ、実際に身の回りでよくあることなんですよね。
家鳴り(ラップ音)だったり、肩凝りだったり、発情期の猫だったり・・・
そんなよくある現象を、「穢れ」に絡めてとことん恐~く描写してくれています。一人暮らしで観ると恐さ倍増です。

この素朴な恐怖演出が見事な分、あからさまなCGで出てくる霊(作中数シーンだけだけど)の怖くなさが目立ってしまっているのは残念ですが・・・

●少々やりすぎ感もある結末。でも恐けりゃヨシ!!

原作小説とは異なり、映画版ではよりエンタメに寄った結末が用意されています。
こういう「呪いを解明して解く」系のホラーにはありがちな(王道な)結末で、演出もここぞとばかりにサービスしてくれます。
少々やりすぎな感もあり、この部分を批判するレビューも多いようです。

でも恐けりゃヨシ!!
直接的すぎるCGはさておき、焼身自殺してしまったアレとか、
ぼーっとアレを眺めるアレとか、アレの声とか、しっかり恐くてたまりません。

僕は「アレを眺めるアレのシーン」が最高でした。
中村監督の「ほんのちょっとやりすぎな暗示のシーン」ってなんか好きです。
『白ゆき姫殺人事件』である人物があからさまに話を逸らすシーンとか。

■まとめ

というわけで『残穢』の紹介でした。

最近のJホラーは映像が綺麗すぎて、あの独特の湿度をもった空気を感じづらかったのですが、
『残穢』では久々にあの空気を感じられるホラー映画に出会えた心地でした。

今ならネットフリックスでも、プライムビデオでも視聴できます。
未視聴の方は是非とも一度ご覧ください。
一人で夜に観て和室を恐がれ!