今年はJホラーがアツい

2020年、Jホラーがアツいです。

2月には清水崇監督(初期の呪怨の人)の最新作『犬鳴村』が公開。
う~んと思う部分は少なくないものの、 無限飛び降り霊や殺人電話ボックス等のシーンで大幅加点の大満足な 久々に骨太なJホラー映画でした。

8月には中田秀夫監督(リングの人)の 『事故物件 恐い間取り』の公開が控えております。
事故物件住みます芸人松原タニシ氏による同名の実録怪奇本を原作。 原作では派手な霊現象に直接出会うことは少なかったと思いますが、 そのあたりをどう調理してくれるのか、楽しみです。

そんな中、ネットフリックスがメガトン級の恐怖と不快を お茶の間にぶちこんでくれました。

今回は『呪怨 呪いの家』のネタバレ無しの見所紹介です。
全6話、約3時間の高密度な恐怖体験。 湿り気、生理的不快感、恐怖、これ最高ヨ。

シリーズ初見も安心『呪怨 呪いの家』

『呪怨』は実際に起きた出来事を参考に作られた。
それらの出来事は、ある一軒の家にたんを発していることが分かった。
だが、実際に起きた出来事は、映画よりも遥かに恐ろしいものだったのだ―


1988年、心霊研究家の小田島は、オカルト番組で共演した新人タレントのはるかが経験した怪奇現象に興味を惹かれる。

母に関わるトラブルによって転校した女子高生の聖美は、クラスメイトに誘われ、「猫屋敷」と呼ばれる空き家に訪れる。

6年後、ソーシャルワーカーの有安は、虐待されているある子どもを救うべく、行動を起こそうとする―

『呪怨』といっても、今やスピンオフやらリブートやら海外版やらで溢れています。

オリジナルビデオ版『呪怨』『呪怨2』 『劇場版 呪怨』『劇場版 呪怨2』
スピンオフの『呪怨 白い老女』『呪怨 黒い少女』
リブート版『呪怨 終わりの始まり』『呪怨 ザ・ファイナル』
海外版リメイクの『THE JUON/呪怨』
その続編で、海外版オリジナルストーリーとなる『呪怨 パンデミック』『呪怨 ザ・グラッジ3』
更に今年は海外版リブート作品『The Grudge(原題)』も公開されております。 日本公開まだかな。
後は『貞子vs伽椰子』も入れると実に13もの作品があるという とんでもねえ大シリーズなのです。( もっと細かいことを言えば、伽椰子や俊雄が登場するショートムービーも何本か・・・)

本作を楽しむにはどの『呪怨』を観ればいいの!?
という人、安心してください。初見で大丈夫です。
だってこれは、フィクション映画『呪怨』の元になった事件を描いたドラマなのですから。

現実の事件に裏に潜む「呪いの家」

「呪怨は現実の事件を元にした」という独白から始まる本ドラマ。
「呪怨はフィクションだ!」と堂々と宣言しており、これまでのシリーズとは ストーリー的なつながりは一切ないため、呪怨シリーズ未見の方にもとっても優しいのです。

このドラマの肝は「元になった現実の事件がある」という部分。
ドラマのストーリーには、「東電OL殺人事件」「名古屋妊婦切り裂き殺人事件」「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」といった、実際に起きた事件が絡んでおり、幼女誘拐殺人事件の犯人、宮崎勤と思われる人物も登場します。それらの事件背景には、実は「呪いの家」が絡んでいたのだ・・・というのが物語の軸となっています。

また、ストーリーには関係しないものの、ドラマ中には 「チェルノブイリ事故」「綾瀬コンクリート殺人事件」「地下鉄サリン事件」「阪神淡路大震災」「酒鬼薔薇事件」などの報道がされるシーンが多用されています。

「Jホラーは見ない」という方に理由を聞くと、「ホラーが嫌い」という答えを除けば、大体「現実味があって恐い」「家にいそうな感じがしてしまう」と返ってきます(僕の体感ですが)
Jホラーが恐いのは、舞台が近いために、フィクションが現実感をもってこちらに働きかけてしまうからだと思っています。

『呪怨 呪いの家』では、現実とリンクしたストーリーや描写が、 「これは現実に起こったことなんだぞ」と嫌になるくらい突きつけてきます。
ただでさえ現実感を感じがちなJホラーが、より積極的にこちらに働きかけてくる。これがこのドラマの魅力の1つです。

僕は年齢的にこれらの事件を肌感覚として感じていなかったのですが、 この時代を生きた人であれば、平成初期の日本を覆った暗い空気が重なってより恐く、不快に感じるのではないでしょうか。

「フィクション」から「現実」へやってくる恐怖

そんな嫌~な現実感をもった『呪怨 呪いの家』ですが、 後半はそんな現実味もぶっ飛ばす程の怪奇現象がバンバン多発します。
また、精神的にも肉体的にもかなりグロくてエグいので、残念ながら「皆観てね!」と押し付けられる作品ではありません。

僕自身、実際に目を背けたシーンもありましたが、 それでも恐怖と不快を求めてしまうのがホラー好きの性(もしくは罪)

映画でもなかなかお目にかかれない、極上の恐怖を是非ともご覧ください。

さて、今回は『呪怨 呪いの家』の他にも「フィクション」と「現実」の境目が曖昧になるような作品をいくつか紹介しておきましょう。

小説『弟切草』シリーズ

かの有名なホラーノベルゲーム『弟切草』
そのシナリオライターの1人、長坂秀佳氏が描いた小説です。
ゲームとは異なるストーリーで『弟切草』『彼岸花』『寄生木』の3作 (あるいはアナザーストーリーの『死人花』『幽霊花』も含めて5作)からなるホラー小説。
1作目『弟切草』、2作目『彼岸花』はフィクションとしてのホラーが描かれたのに対し、3作目『寄生木』には作者本人が登場し、ノンフィクション的な話が描かれます。作者本人が怪奇現象に遭遇し、あとがきも含めて、あとがきの後も含めて怖がらせてくれた、僕のホラー原体験の1つです。

あとこの『寄生木』、私は中古で買ったのですが、本の中に一切関係ない「女性2人が旅行で撮ったと思われる写真」が何故か挟まっており、オシッコちびるかと思いました。何だったんだよ、あれ。

小説・映画『残穢』

心霊ライターの主人公にきた一通の手紙。
「マンションの自室で変な音がする」という他愛もない内容だったが、調査をしてみると―という話。
畳をする音、どこからか聞こえてくる赤ん坊の声、床下から聞こえる何者かの声-
フィクションなのですが、現象の他愛も無さが逆に「経験あるわ」と思わせられます。その現実感が「その根底には伝播する穢れ(呪い)があるのだ」というフィクションまでもをこちらに引っ張ってきてしまう。
「今住んでる場所、大丈夫か?」と思わずにはいられません。

今や原作小説は「引っ越し祝い」として送ることが礼儀になりつつあります。

過去に紹介もしてました

映画『グレイヴ・エンカウンターズ』 『グレイヴ・エンカウンターズ2』

1作目『グレイヴ・エンカウンターズ』は、よくあるファンドフッテージ映画です。
心霊番組の撮影クルーがいわくつきの廃病院でマジモンの怪現象に襲われまくって大変なことになり、残された映像がコレ。という、わりかしありきたりなストーリー。
「現実に起こったことで、視覚効果等は一切加えていない」と作品冒頭でプロデューサー自らがこちらに語り掛けてきます。

その続編『グレイヴ・エンカウンターズ2』は、前作『グレイヴ・エンカウンターズ』を観たホラー好きの学生が「これノンフィクション風のB級ホラーだけど、やっぱり本当の出来事だったんじゃないか?」と調査し廃病院に乗り込むという話。
「これはノンフィクションだ」と言ってしまうことでよりフィクション感が増してしまうという、ホラーのジレンマを逆手に取ったような結末は、B級ホラーと切って捨てるには勿体ない。
今でも定期的に観る(作業用BGMとして流す)作品です。

今でも定期的に観てるの多分僕だけ。

オカルト

これは現実を超えてしまった例。
とある事件に巻き込まれた男に密着取材する中で起こった怪奇現象をおさめたドキュメンタリー・・・という体なのに、作中で未来の描写までしてしまうというトンデモ映画。2026年頃にはルイボスティーが流行ってるらしいですよ。

同監督の『カルト』は昔紹介しました。こちらもキャストが実名で登場する等現実味の強い雰囲気を醸し出しながら後半はぶっ飛び霊能力バトルとなる名作です。
今ならPrimeVideoで無料で観れますよ。観ようね。

気になる作品はあったでしょうか。今年の夏もいっそう暑くなるようですので、ホラーで身体の芯から冷やしていただきたいと思います。

さて、「呪怨シリーズらしくない表現」「でも随所に感じる呪怨イズム(清水崇イズム)」等、まだまだ魅力を語り足りない『呪怨 呪いの家』
全6話、約3時間の地獄はなかなかの見ごたえです。心身共にグロテスクなものも大丈夫だよという方は是非とも一度ご覧ください。

個人的な話になりますが、毎週末(金~日曜)に、ラジオ配信という形で一週間の間で触れた作品の簡単な紹介をしております。PixivFANBOXでの配信ですが、作品紹介は無料でご視聴可能です。良い作品との出会いの一助となれば幸いです。

『呪怨 呪いの家』についても触れております