映画がやってくる!!

コロナ禍はまだまだおさまるところを知らず、 米中冷戦は激化の一途、日本は日本でしっちゃかめっちゃかな日々が続いておりますが、 兎にも角にも映画がやってきます。

クリストファー・ノーラン監督の『テネット』
ダニエル・グレイグ版ボンド新作『007 ノータイム・トゥ・ダイ』・・・
公開延期はされたものの、大作映画の足音が聞こえてきました。

先んじてやってくるのがこの映画
『キングスマン ファーストエージェント』

スーツの紳士が華麗に大胆に悪を討つ キングスマンシリーズ最新作です。

前作、『キングスマン ゴールデンサークル』から早2年。 今でも見返す名作です。この映画、アクションシーンがとにかくイイんです。

そんなわけで、今回は『キングマン ゴールデンサークル』の中のアクションシーンがとにかく最高なんだぞという話と、『キング・アーサー』もアクションシーンがとにかく最高なんだぞという話、それらを手掛けた2人の監督の接点やなんかについて話していきたいと思います。

『キングスマン ゴールデンサークル』のアクションはここがスゴイ

マナーが男を作るのだ。

どの国にも属さない世界最強のスパイ機関「キングスマン」の活躍を描く本シリーズ。
スーツとマナーで武装するベテランエージェント、ハリーは海兵隊を辞めて無為に日々を過ごすチンピラ、エグジーをキングスマンのエージェント候補生としてスカウトする・・・
というのが1作目のストーリー。

巨悪と戦うキングスマンの活躍と、エグジーの成長を過激なアクションとストーリーを交えて描いています。

紳士と不良青年のバディ・アクション的な側面もあり、 オジサマ紳士と不良青年というコンビだけでご飯三杯いける方々もいるのではないでしょうか。
ハリーを演じるコリン・ファースは、オノ・ナツメの漫画からそのまま出てきたみたいなイケオジっぷり。

ビーム投げ縄に野球爆弾、ドローンミサイルに凶悪番犬ロボ!素敵なガジェットが今作も盛り沢山。
チャニング・テイタムのバカなジョック演技は最高ですね。

その続編、『キンングスマン ゴールデンサークル』最終決戦のアクションシーンがたまらないんです。

約2分程のシーンですが、これがもう最高。個人的には、2010年代映画の最高のアクションシーンの1つでした。

鉄を切り裂く敵の武器の脅威、明確なピンチ、武器を奪ったと思えば敵が次の武器を取り出し・・・ ピンチになって打開して、またピンチに―と、目まぐるしく変化する戦況。ワンカット風にグルグルと動きまくるカメラが、ワクワクとハラハラ感を擽ってくれます。

バックで流れるThe BossHossの『Word up』がまたいい味出してます。

いやもう、このシーンだけキャプチャして張りたいくらいです。
このシーンの他にも本作は素晴らしいアクションシーンが多々ありますし、1作目の『キングスマン』も過激で楽しいアクションシーンが目白押しです。
その中でも、特に、このラストの戦闘は最高ですよ。

そして、2010年代最高のアクションシーンを魅せてくれる
キングがもう1つ・・・

歴史的大コケ映画『キング・アーサー』もアクションがスゴイ

スラムのガキから王になれ!!

日本語版タイトルから『聖剣無双』が消されたことでちょっと話題にもなりました。
アーサー王伝説、円卓の騎士団ができるまでを大胆にアレンジし、 大スペクタクルアドベンチャーファンタジーに仕立て上げたのがこの作品。
音楽に乗せた軽妙な演出、やけに冗長な精神描写など本作を手掛けるガイ・リッチー監督の良い所も悪い所も全部楽しめる、ファンとしてはたまらない一作です。

冒頭の本編映像。
親を殺され、スラムの娼婦に拾われた幼いアーサーがムキムキに逞しく成長していく様をほんの1分で描いています。
身体的な成長や幼くして徒党を組むカリスマ性等、 短いカットの連続で情報を伝える、監督の手腕が見て取れます。 この若干置いてけぼりなスピード感がたまりません。
お金を隠した箱を出し入れするカットは 監督のデビュー作『ロック・ストック~』をどこか思い出させます。

ところがこの作品、シャレにならない程の超大赤字をたたき出してしまいました。

制作費1億7500万ドルをかけた大作でしたが、全世界で全く興業が振るわず、現在ハリウッドで最も赤字を出した映画とされています。
ワーナー・ブラザーズは1億5000万ドルの赤字を計上したとか。ひえー。
流行りだった「ユニバース計画」に乗っかろうと、騎士団の面々を主人公としたスピンオフ作品を展開しようという計画もあったそうですが、 そんな計画も一瞬で塵になるレベルの大コケでした。
あのサッカー選手、ベッカムが本作で俳優デビューしていることすら話題にならないレベル。(演技は酷評されてましたね)

そもそも、アーサー王伝説をもとにした映画は全部コケるというジンクスもあるそうなので、仕方ないことです。

ただ、アクションシーンは光るものがあるんです。
特に終盤、襲い掛かる大量の敵兵士をアーサーが剣一本でバッタバッタと倒しまくるシーンが最高。 予告動画で言えばラスト10秒あたり。

グンッグンッと寄っては引いてパンをして・・・と目まぐるしく動くカメラに、 「とにかくアーサーが敵を倒してることは分かる」とんでもない情報量のアクション。ズバっと斬るのではなく、ガスガスと殴るような力強い動き。
スローと早回しを巧みに使い分けるこのアクションシーンを観る為の映画と言ってもいいかもしれません。

確かに脚本はいまいちという印象でしたが、この1分少々のシーンのおかげで全部許せます。
カメラが目まぐるしく動くという点や、寄りと引きの使い方、監督の味を感じさせるという点なんかでは『キングスマン』と共通点を感じます。

さて、この2作、監督も繋がりがあるんです。

『キングスマン』を監督したのはマシュー・ヴォーン
近年では『キック・アス』『XMEN ファーストジェネレーション』等、数々の名作を手掛けてきました。

『キング・アーサー』を監督したのはガイ・リッチー
『スナッチ』で知られる、イギリスが生んだ巨匠です。
近年はロバート・ダウニーJr版『シャーロック・ホームズ』や『 コードネーム U.N.C.L.E. 、 実写版『アラジン』等を監督しています。

どちらも大好きなのですが、この2人、出発点が同じなのです。

ガイとマシュー、2人の名監督

2人の出発点

大学を退学して映画の道を進んでいたマシュー・ヴォーンが、ガイ・リッチーの脚本を読み、魅了されたところから2人の映画道が始まります。
2人は97年に制作会社スカ・フィルムズを設立
翌年1998年に、マシュー・ヴォーンがプロデューサーとなり、ガイ・リッチー初監督作品『ロック・ストック・アンド・トゥー・スモーキング・バレルズ』を発表。この時ガイが29歳、マシューは26歳でした。

古い映画のため、公式トレーラーがありませんでした・・
オープニングシーンや時系列のシャッフル等、
今のガイリッチー作品にもつながる演出が。
オーシャン・カラー・センスのテーマソングも最高。

ちなみに、ジェイソン・ステイサムのデビュー作でもあります。
この作品が成功をおさめ、2000年に2人はこれまた名作『スナッチ』を発表。

こちらも公式トレーラーでなくて失礼。
『バッカーノ!』の成田良悟にも影響を与えた超名作。
アニメ版バッカーノのオマージュも有名です。

ベニチオ・デル・トロブラッド・ピット等の大御所も参加。ブラピは前作『ロック・ストック・アンド・トゥー・スモーキング・バレルズ』に感動して仕事を引き受けたため、破格の低ギャラで出演してくれたとかどうとか。

この2作や、後に発表される『リボルバー』『ロックンローラ』等の作品で、ガイ・リッチーは犯罪群像劇映画の監督としてカルト的な人気を得るようになります。

ガイの犯罪群像劇モノでは一番好きです。『リアル・ロックンローラ』はよ。

マシュー・ヴォーンの監督デビュー

長くガイのプロデューサーを務めてきたマシュー・ヴォーンでしたが、 2004年の『レイヤー・ケーキ』で初監督を務めることになります。

海外版予告編。「スナッチのプロデューサーが手掛ける!」と出てますね。

現在ジェームズ・ボンドを演じるダニエル・グレイグや、『マッドマックス 怒りのデスロード』で2代目マックスを演じたトム・ハーディ等、豪華出演者に囲まれた作品です。

この作品、途中まではガイ・リッチーが監督を務めていたものの、 急遽降板(このあたりの事情はよく分かりません)。 引き継ぐ者がいなかったため、マシュー・ヴォーンが引き受けるという形になったそうです。

ガイ・リッチーらしい犯罪群像劇に、マシュー・ヴォーンらしい コミカルな暴力とアクションが織り交ざった、面白い作品です。

この作品で高い評価を得て、マシュー・ヴォーンは監督業の道を進むことになります・・・

ガイはDC、マシューはマーベル

『レイヤー・ケーキ』以降、接点の無ガイとマシュー。
それぞれハリウッドで数々の大作を生み出しました。

個人的には明暗分かれた道を進んでいるなという印象です。

ガイ・リッチーは、『シャーロック・ホームズ』では興行的に大成功をおさめたものの、『コードネーム U.N.C.L.E.』はややパっとしない結果に終わり、そして『キング・アーサー』では歴史的な大コケ・・・
最新作『ザ・ジェントルメン』は残念ながらあまり話題になっていません。
アラジン』も手掛けていますが、ディズニー映画ということもあり、 監督としての評価は難しい所です。

ガイ味たっぷりの傑作バディアクションムービー。続編作ってほしかったなあ

一方のマシュー・ヴォーンは、過激で鮮烈な『キック・アス』や、 シリーズ後半の良い道しるべとなった『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』、 そして『キングスマン』シリーズと、 何かと話題になり日の当たる、華やかな道を進んでいるイメージです。

過激な原作を過激に映画化。どうもタンキュー!

作風も対称的で、 ガイ・リッチー作品は暗い画面が多く、精神的な描写が目立ち、
作家性を強く感じます。
マシュー・ヴォーン作品は兎角明るくコミカル。時に過激すぎる暴力やエロもあり、若者がガンガン楽しめるというような作品です。

作品の雰囲気や興行的な立ち位置の違いが、まるでDCとマーベルのようだと強く感じます。
商業的になかなかうまく立ち行かない『ジャスティス・リーグ』のシリーズと、今やヒーロー映画の代表格に上り詰めた『アベンジャーズ』シリーズ。
その対立構造が、ガイとマシューに重なって見えてきます。

同じ作品を出発点として映画界に飛び込んだ2人。
長い間接点が無くても、その2人がどこか共通点を感じられる アクションシーンを観せてくれるのは、ファンとしては感慨深いものがあります。

また2人で組んで、犯罪群像劇を作ってほしいですね。